(これは、2023年1月のブログです)今回は上西充子の『呪いの言葉の解きかた』晶文社、2019年のご紹介です。出版されてから4年近く経つんですね。

以前から興味があったのに、読まなかっただなんてもったいない。もっと早く読んでおけばよかった〜と後悔しています。

この本は、私が日々カウンセリングを行う中で感じている「呪いの言葉」について、まさに的確に表現してくれています。

カウンセリングをしていると、どうしても「(女性、男性、親、子ども、部下・・・等)は〜〜であらねばならない」という呪いに縛られている様子が見えてきます。

たとえば、「女性は結婚して子どもを産むべき」「母親は子どものために自己犠牲をするべき」「男は泣いてはいけない」「親は子どもを立派に育てなければならない」「部下は上司の指示に従うもの」など、社会の中に根付いた価値観が、人々の心に深く刷り込まれています。

こうした価値観がすべて悪いというわけではありません。しかし、それが「ねばならない」と強制的なものになったとき、人は苦しみます。ある価値観や文化の中にどっぷり浸かっていると、その影響に気づきにくいものです。けれども、外からの視点を持つ人や、その環境の中で息苦しさや違和感を抱えている人は、「何かがおかしい」と感じ始めます。

その違和感を大切にできればいいのですが、現実には「自分が間違っているのではないか」「自分がおかしいのではないか」と思い悩む方が多くいらっしゃいます。社会の期待に応えようと頑張り続け、無理を重ねてしまうのです。

「私が変わらなければ」「周りに適応しなければ」と努力を重ねるうちに、心が疲れ果ててしまう。そして、自分らしさを失い、いつしか自分の本当の気持ちすらわからなくなってしまうのです。

カウンセリングに訪れる方の中には、「自分を責め続けてきた」と話される方も少なくありません。「こうあるべき」に縛られすぎると、「こうありたい」という自分の気持ちが押しつぶされてしまいます。その結果、気持ちが不安定になったり、強いストレスを感じたりすることにつながるのです。

だからこそ、私はカウンセリングを通して、こうした「呪いの言葉」から解放されるお手伝いをしたいと考えています。自分らしく生きていい、ありのままの自分を受け入れていい。そのことを伝えたいのです。

「呪いの言葉の解きかた」には、こうした呪いの言葉に対して、どのように切り返せばよいかの文例も掲載されています。読んでみると、「ああ、こういう言葉にずっと違和感を感じていたんだ」「だからモヤモヤしていたんだ」と、自分の中の疑問がクリアになっていく感覚がありました。

政治やジェンダー問題、ハラスメントなど、日常の中で感じる「なんとなくおかしい」と思っていたことの正体が見えてくる。そして、それに対してどのように対応すればいいのか、少しずつでも手がかりが得られる。そんな希望を持つことができる本です。

私自身、カウンセリングを通して、相談者の方々が少しでも自分らしさを取り戻し、「こうでなければならない」ではなく、「こうありたい」と思える生き方を選べるようにサポートしていきたいと改めて感じました。

もし、「私はこうでなければいけない」と苦しんでいる方がいたら、ぜひこの本を手に取ってみてください。そして、自分自身の心の声に耳を傾けてみてください。

あなたは、あなたのままでいいのです。

そのことを、一緒に考えていきましょう。