「それ、面白そう!」「やってみたい!」「楽しい!」
こんな気持ちになったのは、いつが最後でしょうか?

忙しい毎日の中で、「やらなきゃいけないこと」「やるべきこと」に追われていると、ふと自分の“楽しい”や“面白い”という感覚から遠ざかってしまうことがあります。でも実は、この「面白い」「楽しい」と感じる心は、私たちが自分らしく生きていくための、大切な“力”なのです。


■「やらされる」のではなく「やりたい」から始まる

心理学では、人が何かに向かって自然と動き出す心のエネルギーを「内発的動機づけ(ないはつてきどうきづけ)」と呼びます。これは外からの報酬や評価のためではなく、自分の中から湧き上がる「やってみたい」「知りたい」「うまくなりたい」という気持ちが原動力になります。

子どもが何度も転びながらも、自転車の練習をやめない。夢中で絵を描き続ける。そんな姿にも、この内発的動機づけがあらわれています。
大人になると、つい「役に立つか」「評価されるか」で物事を選んでしまいがちですが、実は「面白そうだから」「なんだか楽しそうだから」と始めたことの方が、長続きしたり、自分らしさにつながったりすることも多いのです。


■「楽しい」は、心の栄養になる

「楽しい」「面白い」と感じるとき、私たちの脳ではドーパミンという神経伝達物質が分泌され、ワクワクしたり、前向きな気持ちになったりします。これが、心のエネルギーの源になります。

また、「楽しい」と感じられる時間は、ストレスや不安を一時的に和らげ、心の回復力(レジリエンス)を高めてくれます。だからこそ、ほんの短い時間でも「楽しい」「面白い」と思えることを日常の中に持つことは、心の健康を保つうえでとても大切なのです。


■「楽しいことなんて思いつかない…」そんなときは

「面白いこと」「楽しいことなんて、今の自分には思い浮かばない」という方もいるかもしれません。特に、心に余裕がないときや、自分を責めてしまっているとき、「楽しむ」ことに罪悪感を持ってしまうこともあります。

そんなときは、「子どもの頃、何が好きだったかな?」「時間を忘れて夢中になったことは?」と、自分の過去をふり返ってみるのも一つの方法です。
あるいは、ちょっとした“気になる”でもいいのです。「このカフェ、行ってみたい」「この本、タイトルがなんだかいいな」——そんな小さな好奇心を丁寧に拾っていくことが、“楽しい”への扉になります。


■「楽しい」から始まるつながり

さらに、「楽しい」「面白い」は人とのつながりにも影響します。何かに夢中になっているとき、人は自然と笑顔になり、その笑顔はまわりにも伝わります。
同じ興味を持つ人と出会ったり、話が弾んだり。そんなふうにして、新しい人間関係が生まれることもあります。

そして何より、「自分が心から楽しんでいる」という体験は、自分自身を大切にする感覚を育んでくれます。これは、他人と比べることのない、自分だけの軸をつくる力にもなります。


■心が動く瞬間を、大切に

日々の中で、「これ、ちょっと面白そう」「なんか楽しそう」と心が動く瞬間は、きっと誰にでもあります。でもそれに気づくには、少しだけ“自分の心”に耳をすませる必要があります。

忙しいとき、疲れているときほど、自分の「楽しい」に目を向けてみてください。それは、自分を立て直すヒントになるかもしれません。

「楽しい」は、決して“気のせい”でも“贅沢”でもありません。
それは、生きる力です。

あなたの毎日にも、ちいさな「楽しい」が見つかりますように。