「うちの子、なかなか言葉が出なくて…」「周りの子と比べて、言葉の発達が遅い気がするんです…」

カウンセリングルームには、そんな不安の声がよく寄せられます。大切なお子さんの言葉の発達がゆっくりだと、心配になるのは当然のことです。

言葉の発達には個人差があり、焦りは禁物ですが、一般的な目安を知っておくことで、お子さんの成長をより深く理解することができます。今回は、絵本の読み聞かせや言葉がけに加えて、ご家庭でできる具体的なサポートと、言葉の発達の目安についてお伝えします。

言葉の発達の一般的な目安

お子さんの言葉の発達は、個人差が大きいものですが、以下のような目安があります。

  • 1歳6ヶ月頃: 「パパ」「ママ」の他に、指差ししたものを中心に4〜5個程度の単語を話すようになることが多いです。
  • 2歳頃: 「ワンワン きた」「ブーブー ない」のように、二つの言葉を繋げた二語文が出始めることがあります。また、身の回りのものに興味を持ち始め、**「これ なに?」**と尋ねることが増えてきます。
  • 3歳頃: 「ぼく、くるま 押す」「ママ、ごはん 作る」のような三語文を話せるようになる子が増えます。また、色の名前を理解したり、質問に答えたりできるようになり、理解できる単語の量が爆発的に増える時期です。

これらの目安はあくまでも一般的なものであり、お子さんの発達ペースはそれぞれ異なります。しかし、これらの目安を知っておくことで、お子さんの成長を見守る上での参考になるでしょう。

1.まずは「聞く力」を育てましょう

言葉の発達の土台となるのは、「聞く力」です。周りの人の声や音にしっかりと耳を傾けることが、言葉を理解し、発する第一歩となります。

具体的な関わり方

  • 穏やかな声で話しかける: 赤ちゃんや幼児は、高い声や優しい声によく反応します。穏やかなトーンで、ゆっくりと話しかけましょう。
  • 周囲の音を言葉にする: 「ワンワンだね」「雨が降ってきたね」など、身の回りの音や状況を言葉にして伝えてあげましょう。
  • 指さしやジェスチャーを活用する: 言葉だけではなく、指さしや身振り手振りを交えることで、より理解しやすくなります。「これ、どうぞ」「バイバイ」など、簡単な言葉と動作をセットで伝えましょう。
  • 静かな環境を作る: テレビやスマートフォンなどの音はできるだけ控え、お子さんが落ち着いて人の声に耳を傾けられる環境を整えましょう。
  • アイコンタクトを大切にする: 話すときは、お子さんの目をしっかり見て、気持ちを伝えながら語りかけましょう。

2.遊びを通して言葉を豊かにしましょう

遊びは、言葉を学ぶ絶好の機会です。楽しい体験を通して、自然と言葉への興味を引き出し、語彙力を増やしていくことができます。

具体的な関わり方

  • 実物に触れながら言葉を教える: 果物やおもちゃなど、実際に手に取れるものを見せながら、「これはリンゴだよ」「赤いね」などと説明しましょう。
  • ごっこ遊びを楽しむ: おままごとや積み木遊びなど、役割を演じながら言葉を使う遊びは、コミュニケーション能力の発達を促します。「いらっしゃいませー」「どうぞ」などの簡単なフレーズから始めましょう。
  • 歌や手遊びを取り入れる: リズムに合わせて言葉を覚えることは、楽しく効果的です。童謡を歌ったり、手遊びをしたりする中で、自然と新しい言葉に触れる機会を作りましょう。
  • 一緒に料理をする: 食材の名前や調理の手順を言葉で伝えながら、一緒にお料理をするのも良い経験になります。「ニンジンを切るね」「混ぜてみようか」など、実況中継のように話しかけましょう。
  • お散歩で発見を楽しむ: 公園や近所を散歩しながら、花や虫、建物など、目に入るものを言葉で説明しましょう。「きれいな花だね」「アリさんが歩いているね」など、発見を共有する喜びを味わいましょう。

3.親子のコミュニケーションを深めましょう

お子さんの言葉の発達には、保護者の方との温かいコミュニケーションが不可欠です。しっかりと向き合い、応答することで、お子さんは安心して言葉を使い始めることができます。

具体的な関わり方

  • お子さんの言葉に耳を傾ける: たとえつたない言葉でも、最後まで 注意深く聞いて、共感する姿勢を見せましょう。「うんうん」「そうなんだね」と相槌を打つだけでも、お子さんは安心して話すことができます。
  • 言葉にならないサインを読み取る: 表情やジェスチャーなど、言葉以外のサインにも注意をはらい、お子さんの気持ちを理解しようと努めましょう。「これが欲しいのかな?」「眠たいのかな?」と、言葉にして代弁してあげるのも良いでしょう。
  • 間違いを指摘するよりも、褒める: 言葉の間違いをすぐに指摘するのではなく、正しい言葉、発音を教えてあげましょう。「新しい言葉を覚えたね」と、できたことを褒めて、自信につなげましょう。
  • ゆったりとした時間を作る: 忙しい毎日の中でも、お子さんとゆっくり向き合う時間を作りましょう。絵本を読んだり、一緒に遊んだりする中で、自然な会話が生まれるはずです。

4.専門家のサポートも検討しましょう

言葉の発達には個人差が大きいとはいえ、目安と比べてあまりにも遅れが気になる場合や、他の発達面での心配がある場合は、専門家への相談も検討しましょう。

  • かかりつけの小児科医: まずは、かかりつけの小児科医に相談してみましょう。発達の状況を確認し、必要に応じて専門の医療機関や相談機関を紹介してくれます。
  • 地域の保健センター・児童相談所: 地域の保健センターや児童相談所では、発達に関する相談や支援を行っています。専門の相談員に話を聞いてもらったり、適切なアドバイスを受けることができます。
  • 言語聴覚士(ST): 言葉やコミュニケーションの専門家である言語聴覚士は、お子さんの発達状況を詳しく評価し、個別の支援プログラムを提供してくれます。保健センターや自治体にあることばの教室に在籍していることが多いです。

5.焦らず、お子さんのペースを見守りましょう

言葉の発達は、階段を一段ずつ上るように進んでいくものではありません。時には停滞したり、後退したりすることもあります。大切なのは、一般的な目安を知りつつも、焦らず、お子さんのペースを尊重し、温かく見守ることです。

保護者の方の不安な気持ちも理解できますが、お子さんにとって一番大切なのは、保護者の方の笑顔と丁寧な関わりです。日々の関わりの中で、たくさんの言葉のシャワーを浴びせ、豊かな言葉の土壌を育んでいきましょう。

当カウンセリングルームでは、言葉の発達に関するご相談も承っております。一人で悩まず、お気軽にご相談ください。お子さんの成長を一緒にサポートさせていただきます。