5月に入り、富山にもようやく本格的な春の空気が満ちてきました。今日の日中は夏のような陽気。日差しも強く、外に出るには少し気合いが必要な暑さでしたね。

そんな中、私は家事を済ませ、仕事の相談にも対応し、あれこれ頭を使った一日を過ごしていました。体も心もどこか疲れていて、「今日は散歩はお休みかな」と思っていたのです。

でも、夕方7時を過ぎたころ。ふと窓を開けてみると、空気ががらりと変わっているのに気づきました。昼の暑さがうそのように、ひんやりとした、でもどこか優しい風が入ってきました。気づけば、「少し歩きたいな」と体が自然に反応していました。

「せっかくだし、子どもも誘ってみよう」

運動公園まで、ふたりで出かけました。夜の公園には、ちらほらとランニングをする人や、のんびり散歩する人の姿。空にはうっすらと月。虫の声やカエルの合唱、葉のこすれる音……。聞き慣れたはずの音が、今日はひとつひとつ、体に染み込んでくるような感覚がありました。

最初は「歩きながら仕事のことを整理しよう」と思っていたのですが、いざ歩き始めると、その考えはどこかへ吹き飛んでしまいました。それくらい、夜の空気が気持ちよくて、ただその「気持ちよさ」を感じたくなったのです。

そこで私は、途中から「マインドフルな散歩」に切り替えることにしました。

歩きながら、頭の中のおしゃべりを少し脇に置いて、ただ「今、この瞬間」に意識を向けてみる。風の冷たさ、足の裏の感覚、子どもの笑い声、遠くのランナーの足音。何かを分析したり、評価したりせずに、「感じること」に集中してみる。

そんな風に過ごした1時間の散歩は、まるで短い旅のようでした。

家に帰るころには、心がふっと軽くなっていました。「仕事のことは、またあとで集中して考えればいい」。そう自然に思えるくらいに、気分が整っていたのです。

私たちはつい、忙しさの中で「ついでに考える」「ついでにやってしまう」ことが習慣になりがちです。けれど、そうやって同時進行ばかりしていると、心が置いてけぼりになってしまうことがあります。

だからこそ、意識して「今ここにいる自分」に立ち戻る時間が必要なのだと思います。

マインドフルネスというと難しそうに聞こえるかもしれませんが、実はとてもシンプルです。五感をひらいて、体で感じることを味わう。ただそれだけでも、私たちの心はリセットされるのです。

忙しい日常の中に、そんな時間を少しだけでも持つことで、気づけば心の風通しがよくなっている。そんな体験を、ぜひ皆さんにも味わってほしいなと思います。

今日の富山の夜のように、季節がやさしく背中を押してくれるときもあります。もし、「ちょっと歩こうかな」と思える瞬間があったら、その気持ちにそっと乗ってみてください。目的がなくても大丈夫。ただ歩くだけでも、何かが整っていくはずです。

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※カウンセリングルームでは、マインドフルネスを取り入れたストレスケアや子育て支援も行っています。日々のモヤモヤを少し整理したいときは、どうぞ気軽にご相談ください。