育休明け、いきなり全力で動かないで
〜ゆるゆると再始動することの大切さ〜
育児休業を終えて、いよいよ職場復帰。
久しぶりの通勤電車に揺られ、スーツに袖を通し、PCの電源を入れる。
「ただいま」と言える場所がある安心感もある一方で、「またこの日々が始まるのか…」と、なんともいえない不安や緊張を抱えて出勤する方も多いのではないでしょうか。
育児休業というのは、決して「休んでいた時間」ではありません。
昼夜問わずのお世話、授乳、夜泣き、離乳食、発熱…
自分の時間などない中で、小さな命を守り、育てるという役割に全力を尽くしてきたあなた。
その頑張りは、言葉にならないほどの重みと価値があります。
にもかかわらず、いざ職場に戻ると「ちゃんと働かなきゃ」「戦力にならなきゃ」「周囲に迷惑をかけたくない」といったプレッシャーが、静かに重くのしかかってくることがあります。
特に、復帰を心待ちにしてくれていた上司や同僚から「また一緒に働けてうれしい」「頼りにしてるよ」と声をかけられると、期待に応えたいという思いが強まり、無意識に自分にムチを打ってしまうこともあります。
でも、少し立ち止まって考えてみてください。
あなたは「元に戻る」のではなく、「新しい生活と働き方を始める」段階にいます。
以前とは違い、子どもの送迎や体調管理、家庭のスケジュールが日々の前提になります。
仕事のあとに残業ができない、帰宅後に休む暇もなく育児が待っている——そんな状況のなかで、これまで通りの働き方を目指すのは、あまりにもハードルが高すぎるのです。
実際、多くの方が復帰後しばらくして、体調を崩したり、燃え尽きたような感覚に陥ったり、自信をなくしてしまうといいます。
「自分だけうまくいかない」「やっぱり両立なんて無理だったのかも」と悩んでしまうのも、よくあることです。
でも、忘れないでください。
復帰は“レースの再スタート”ではなく、“リズムをつくる時間”です。
ここから、仕事と育児のバランスをどう整えていくか、自分に合ったペースを見つけていく期間なのです。
最初から100%の力を出さなくていい。
完璧を目指すのではなく、「今日はこれができた」と思える小さな前進を積み重ねていく。
それが、長く健やかに働き続けるための土台になります。
たとえば、朝の支度がうまくいかずバタバタしても、「遅刻せずに出勤できた自分」を褒めてあげましょう。
職場で集中できない時間があっても、「今日は職場に来られただけでOK」と自分に声をかけましょう。
一日を終えて「今日もなんとか乗り切った」と思えたなら、それは立派な成果です。
もちろん、制度や周囲の理解を借りることも大切です。
時短勤務、リモートワーク、急な呼び出しへの備えなど、無理をせず利用できるものは遠慮なく使ってください。
「迷惑をかけてはいけない」と思うあまり、サポートを受け取れないまま抱え込んでしまうと、結局は心身の負担が増えてしまいます。
そして、比べないこと。
同じタイミングで復帰した同僚が、バリバリ仕事をこなしているように見えても、それはその人の事情や支援体制があってのこと。
「私はまだ全然ダメ」なんて思わないでください。
今の自分にとってちょうどいいペースを見つけることこそが、何よりも価値ある歩みです。
育児と仕事の両立は、正直、簡単ではありません。
だけど、どちらかを犠牲にしなければならないわけでもない。
あなた自身の“心と体の声”を聴きながら、少しずつ調整していけば、ちゃんと自分らしい働き方は見つかっていきます。
復帰して間もない頃は、自分の力をうまく発揮できない感覚にモヤモヤしたり、焦ったり、不安になったりするものです。
でも大丈夫。そのゆらぎも含めて、「再スタートに必要なプロセス」なのです。
どうか焦らず、比べず、ゆるゆると。
今日の自分を、明日の自分がちょっとだけいたわってあげられるように。
そんな風に、やさしく一歩ずつ歩んでいきましょう。