「今年の目標は?」
誕生日の夜、プリンを食べながら何気なく聞いた私に、息子は少し照れくさそうに、けれど真剣な目で「生きる」と答えました。

思わず胸がつまって、笑ってごまかしながら「それ、大事だね。中学校までは生きる屍みたいだったから、今日からは楽しく生きるだね」と返しました。けれど心の中では、涙があふれそうでした。

中学校までは、学校が合わず、息子はずっと眠っていました。体調が悪いわけでもなく、ただ、布団から出られない。朝起きられない。学校に行くことを考えるだけで頭やお腹が痛くなり、吐き気がする日もありました。

最初は私は「どうしてうちの子がこんなことに?」という思いばかりが募り、夫は無理に学校へ引っ張っていこうとしたこともありました。頑張って登校させては帰ってきて泣かれる。そんな日々に私も夫も疲れきっていました。

でも、ある日ふと気づいたのです。
「この子は”学校”がつらいのであって、”生きること”をやめたいわけじゃないんだ」と。

そこからは、本人のペースで過ごさせることにしました。もちろん、迷いや不安は常にありました。でも、無理に「普通」に合わせようとすることより、「この子がこの子らしくいられる場所」を探す方が、何倍も意味があると感じたのです。

そんな中で、本人が自分で「行ってみたい」と言った通信制の高校がありました。習い事の先生から教えてもらったのだそう。初めての見学の日、いつもは緊張しやすい息子が、笑って楽しかったと帰宅した時のことを、私は今でも忘れられません。

入学してから、少しずつですが、彼の世界が広がり始めました。人数は多くないけれど気の合う友達もでき、週に3日は自分から外に出かけていくようになりました。買い物嫌いなのに、自分からほしいものを伝えるようにもなりました。

苦手な運動も、友達と一緒なら楽しい。ある日、「今日はバドミントンやったよ。全然できなかったけど、笑った〜」と話してくれました。

最近では、好きなカードゲームの話を楽しそうにしてくれたり、自分の部屋に戻る前に「今日、〇〇があってね」とポツリと話してくれたり。
そんな何気ない会話が、今の私たちの宝物です。

親として、心から願っていたのは「元気でいてほしい」それだけでした。
だからこそ、あの「生きる」という言葉には、たくさんの想いが詰まっていたのだと思います。

今、お子さんの登校しぶりや不登校に悩んでいるお母さん、お父さん。
きっと、毎日が不安と心配でいっぱいかもしれません。

「うちの子だけがこんなふうになってしまった」
「ちゃんと育てられなかったのかもしれない」
そんなふうに、自分を責めてしまうこともあるかもしれません。

でも、どうか覚えていてください。
子どもたちは、ちゃんと自分で「生きよう」としています。
そのために必要なのは、”つながれる場所”です。
たとえ学校でなかったとしても、どこかに必ず、子どもが安心していられる場所があります。

そして、親もまた、誰かとつながっていいのです。
一人で抱え込まなくていい。誰かに話すことで、少しずつ視界が開けていくこともあります。

私たちのカウンセリングルームでは、子どもと親、それぞれの「しんどさ」に寄り添うサポートを行っています。
特に不登校や登校しぶりに悩むご家庭へのカウンセリングでは、安心して話せる場を大切にしています。
無理に登校させるのではなく、「今のこの子にとって必要な環境はなにか?」を一緒に考えていきます。

また、親御さん自身が自分の気持ちに気づき、整理できるようなサポートも行っています。
親が少し楽になることで、子どもにも変化が起きることは、少なくありません。

どうか、一人で抱えずに、つながってください。
「生きる」と言えたあの日の息子のように、どこかで少しずつ、道は開けていきます。