「どうしてこの子は、みんなと同じように動けないんだろう?」
「周りの子が静かにしているのに、うちの子だけ動き回っている…」
そんなふうに感じて、困ってしまうことはありませんか?

そしてつい、「みんなと同じようにしなさい」「ちゃんと座って!」
そんなふうに言葉をかけてしまった経験、あるのではないでしょうか。

でも実は、こうした声かけが、子どものやる気をそいでしまったり、「自分はダメなんだ」と感じさせてしまうことがあるのです。


「みんなと同じ」は、そんなに大事?

集団生活の中で「みんなと同じ行動をとること」は、時に求められることです。
けれど、子どもたちの中には、それが難しい子もいます。

・新しい場所に慣れるのに時間がかかる子
・不安や緊張が強い子
・自分のペースで動きたい子
・周囲の状況を読み取るのが苦手な子

さまざまな背景があって、「今はできない」だけかもしれないのです。
それなのに、大人から「どうしてできないの!」「みんなできてるよ!」と声をかけられると、子どもはこう思ってしまいます。

「ぼくは、わたしは、みんなと同じようにできないダメな子なんだ……」

そんな気持ちが積み重なっていくと、幼稚園や学校が「つらい場所」になってしまうこともあります。


声かけひとつで、子どもは変わる

もちろん、親も先生も、子どもに「ちゃんと行動してほしい」と願っているだけ。
決して子どもを責めたいわけではないはずです。

けれど、その“伝え方”を少し変えるだけで、子どもの心の受け止め方は大きく変わります。

たとえば…

✕「みんなと同じようにしなさい」
〇「今は◯◯の時間だから、一緒にやってみようか」
〇「ゆっくりでも大丈夫。少しずつやってみようか」

✕「どうしてまた○○してるの!」
〇「○○したくなるくらい元気なんだね。でも今は△△の時間だよ」
〇「その気持ちも大事にしつつ、こっちのこともしてみよう」

子どもの行動の「背景」にある気持ちをくみ取りながら伝えると、不思議と子どもは安心して動けるようになります。
無理やり変えようとするよりも、「受け止める→促す」の順番を意識してみてください。


親にとっても、「声かけ」は試行錯誤の連続

とはいえ、どんな声かけがその子に合うのかを見つけるのは、簡単ではありません。
きょうだいでも、まったく性格が違うこともあるでしょうし、昨日うまくいった声かけが今日は通じない、ということもあります。

「もうどう言えばいいのかわからない…」
「このままでは叱ってばかりで、関係が悪くなりそう」

そんなふうに感じている親御さんも、決して少なくないはずです。


大切なのは、「観察」と「性格を知ること」

子どもが「なぜその行動をとるのか?」には、必ず理由があります。
不安、緊張、こだわり、疲れ、気持ちの切り替えの難しさ、などなど…。
それはその子の持つ“個性”であり、“背景”です。

ですから、まずは「どうしてこの子は、いまこの行動をとっているのかな?」と観察してみてください。
叱る前に、少しだけ立ち止まって「この子なりの意味」があるかもしれないと考えてみる。
その視点が、適切な声かけのヒントになります。


ひとりで抱え込まず、相談してください

とはいえ、忙しい日々の中で、常に冷静に観察したり、声かけを工夫したりするのは大変です。
親も先生も人間ですから、イライラしてしまう日もあります。

そんな時こそ、私たちのようなカウンセリングルームを活用してほしいと思います。

私たちは、親子のやりとりやお子さんの行動を一緒に振り返りながら、
「どんな声かけが有効か」
「どういう場面で、どう関わると子どもは安心するか」
を、具体的に一緒に考えていきます。

親だけで頑張りすぎる必要はありません。
専門家と一緒に、少しずつでも、お子さんの行動の理由を理解し、よりよい関わり方を見つけていきましょう。


最後に

声かけは、親から子への「ことばのプレゼント」です。
そのことばが、子どもの心に届くように、
その子らしさを大切にしながら、やさしい工夫を重ねていきたいですね。

そして、迷ったときは、どうかひとりで抱え込まずに。
あなたの思いを、私たちと一緒に言葉にしていきましょう。